2014年8月28日木曜日

ニャンドゥティとは

先の投稿でご案内した、Guarani Pora en Tokioイベントに際して、ニャンドゥティの説明文を書かせていただきました。自分では分かっているつもりでいたけど、分かりやすく文章で書くのはなかなか難しかったです。手持ちの文献をあたったり、ネットで調べたり、、、ニャンドゥティは主に口伝えで伝わったパラグアイの伝統技法のため、その由来も諸説あって、文献ごとに違うといってもいいくらい。どれが正しくて、どれが間違っているということは誰にも証明できないもの。ですから、もっとも一般的に知られていて、自分なりにしっくりくるもの、を選んで書いてみました。
以下、全文を掲載いたします。ニャンドゥティってなんだろう、と検索してこのブログにたどり着いてくださった皆様のご参考になればとても嬉しいです。



Ñandutíとは
 はじめてニャンドゥティをご覧になった方は、「これは何かしら、刺繍かな?レースかな?」と思われるのではないでしょうか。素朴な木の刺繍枠に張られた布の上にある状態だと刺繍のように見え、布から外すとレースのように見えます。布の上で針を使って作るレース、という説明が一番近いかもしれません。布に刺繍糸を使って刺していきますが裏側にはモチーフを支える輪郭だけが現れて、模様は全て表面に張り巡らされた糸の上に形作られていくのです。その様子から、ニャンドゥティは蜘蛛の巣に例えられています。

 ニャンドゥティはパラグアイ固有の言葉であるグアラニー語です。ニャンドゥティが何を意味するかについて、蜘蛛の家=巣である、白い蜘蛛であると諸説あります。グアラニー語が口承言語であるために他の言語に置き換えることが難しいからです。いずれにせよ蜘蛛に関係があることはその伝説からも伺えます。ニャンドゥティの伝説にもいくつかヴァージョンがありますが、その中でも私の好きな伝説をご紹介いたします。

結婚式の日に現れなかった恋人を捜して、娘は草原をさまよいました。日が暮れる頃に、娘は恋人が死んでいるのを見つけました。地面に臥した恋人の傍らにひざまずいて、娘は夜を明かしました。日が昇り、娘は亡くなった恋人の身体が蜘蛛の巣に覆われてきらめいているのに驚きました。娘はこの小さな虫がしてくれたことを残さなくてはならない、と思い急いで家に戻って、針と糸を取ってきました。それから何時間もかけて一生懸命、恋人の遺体を覆う布を編み続けました。これがニャンドゥティの始まりと言われています。

 ニャンドゥティはパラグアイの伝統工芸ですが、技術的な面でいえば、スペインからもたらされたレース技術、《テネリフェ》、《ソル》、《ルエダ》レースの影響が見られます。ニャンドゥティがこれらのスペインレースと大きく違うのは、その目を奪う鮮やかな色彩であり、もともと宗教的な性格をもつスペインレースのストイックさに比べて、ニャンドゥティは身近な植物、動物、家財道具をモチーフに取り入れているところです。パラグアイの豊かな自然に囲まれて、朝露に光る蜘蛛の巣の美しさを写し取ってきたのがニャンドゥティと言えるでしょう。


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